To-orist Studio Visit
ロンドンのヤングブランド To-orist(トゥリスト)。彼らのスタジオ兼ショールームは、ゆらゆらと揺らめく水面の上にありました。創設者でありデザイナーの Brian Gathii 氏の案内のもと、彼らの追い求める旅についてご紹介します。
ノース・ロンドンの片隅、近代的な工業地帯と葦に覆われた運河に挟まれて、その場所は浮かんでいます。Barge と呼ばれる小型荷物船大のカナルボート、それこそがブランド To-orist のスタジオ兼ショールームでした。デザイナー Brian Gathii 氏自身の軌跡が形になった、まさにブランド・アイデンティティそのものといった趣です。
ページ左右の矢印をクリックすると、Gathii 氏のボートを撮影したムービー、さらに次ページでは Gathii 氏本人によるインタビューがご覧頂けます。彼の冒険や発掘、未知の分野に対する情熱とクリエイションとの関連性を解説して頂きました。
長さ40フィートの船体、その内部は驚くほど広々としたものでした。
Brian (以下B):「To-orist の根底にあるものは、'探求' なんだ。僕自身の名前の 'Gathii' がまず、旅人とか放浪者って意味だからね。名は体を表すってやつだよ。ただし、この鉄製のモンスターボートは陸地としっかり固定されているんだけどね。ここのところ数年間はたまに帆を広げたり、エンジンをふかしたりして楽しんでいるよ。それだけで一瞬にして旅のムードが出来上がるんだ。旅、探検、放浪の響きと、僕は共鳴し合うんだ。」
外観もさることながら、ボート内部はまさに別世界でした。見た事もないような異国情緒溢れるインテリアは、どれも Brian 自身が長年の旅で集めたもの。ネパールの高山に暮らすシェルパ族のバッグ、地中海に浮かぶイビザ島から持ち帰った奇抜なサングラス、、、そんな世界各国の珍品を寄せ集めたようなコレクションも、To-orist のスタジオで目にすればどことなく通じるものがあるように見えてくるから不思議です。そしてそれこそが彼の構築するオーセンティックであり、ブランドテーマであるのでしょう。長さ40フィート、その内部は驚くほど広々としたものでした。
彼自慢の数々の戦利品には、どのような物語が隠されているのでしょうか。そしてその中には、To-orist オーセンティックを読み解く鍵があるはず。我々は彼のボートを彩る数々のおみやげ達について、より突っ込んだ話を聞くことにしました。
まず、我々の興味を掴んで離さなかったのは Brian 本人が被っていたものでした。「その帽子はどこで?」という我々の質問に対する解答は、「オーストラリア?いやアフリカ?サウスアメリカだったかな?」という、なんとも曖昧なもの。早速そのハットに関するバックグラウンド・ストーリーをお聞きしました。
B:「いや、これは実は何年か前にショーディッチで浮浪者みたいなおばさんから買ったものなんだよ。結構年のいってるおばさんで、日曜に道端で新聞紙の上に色んな変な物を広げて売ってたんだ。その中からなんとなくこれを買ってね、5ポンドとかそれ位だったよ。」
それはネイティブ・オーストラリアのテイストが色濃く感じられるもので、丁度クロコダイル・ダンディ(オーストラリアのコメディ映画)のジョークが流行る少し前の事だったそう。
B:「これ、ちょっと映画の中の'ダンディ'っぽいだろ?」
Brian はにやりとして続けます。
B:「そのものを得た経緯とか、リファレンスとかって、時々消してしまってもいい時があるんだ。大事なのはそれがコレクションの中のどのような存在かという事で、もし背景に変なポイントがあったら話すだけ無駄だし、かえってダサい。でもちょっとしたひねりと正しい見せ方で格好良くできるんだよ。」
次に我々が指名したのは、動物の皮を使ったと思われるスクエア型のバックパック。毛足の長いファーがそのまま付いたバッグ部分に、擦り切れたレザーのストラップ。その特殊なデザインや古ぼけ方から、我々はここには何か物語があると感じました。しかし意外にも、Brian の興味はそのフォルムをはじめとしたバッグとしてのデザインそのものにありました。
B:「これは、すごくセンスを与えられたアイテムだよ。確かチベットかどこかのもので、素材はラクダの皮じゃなかったかな。見つけた瞬間に、僕の中の何かが呼び覚まされるような感じを受けるもの。それが僕の選択基準なんだ。」
どうやら彼は、そのものに込められた歴史や文脈よりもその場の直感に従って行動するタイプのよう。
果たしてこのバッグは、およそ100年前に作られたネパールのシェルパ族の伝統工芸なのか、あるいはイギリスケント州の工場で作られたレプリカか、、、そんな事は彼にとって全く問題でない様子。問題は、自分自身にアイデアを与えてくれるかどうか、その一点に尽きるのだそうです。
To-orist のファンならばすぐにピンとくる、ヴィンテージ感漂うこのフローラル・タペストリープリント。実のところ To-orist というブランドは Brian のプリントに対する情熱から始まったとか。
「僕は、ペンショナー(年金受給者)世代のオールド・ファッションな感覚が好きなんだ。このバッグは数年前、まだ僕がデザイナーになる前に、近所のチャリティーショップで買ったものなんだ。実際に使ってもいたよ。カレッジに通う青年、って感じがしない?」
そして今、バッグと同様のプリントデザインはTo-orist コレクションの中の Tシャツ として新たな命が吹き込まれています。モダン・メンズウエアであるべきそれは、時にはトルコ人のおばさんのハンドバックを思い起こさせるかも。しかしそんな面白みこそが Brian の狙うブランド・オーセンティックそのものであるのです。
世界にまたとないヴィンテージ・ピースで埋め尽くされた Brian のコレクション。それらは人の歴史に対する賞賛を含んだノスタルジックな空気を醸し出しています。その中でひときわエッジィな輝きを放っていたのが、このサングラスでした。フューチャリスティックで構築的、かつユーモアを感じるデザインは、To-orist テイストにはぴったりの一品。購入場所はスペイン・イビザ島、なんとありふれたみやげ物屋で見つけたという、まさに掘り出し物です。
このオープンさ、そして他人が見ないような所にも進んで入り込んでゆく軽快さ、それこそが旅を実り豊かにしているのでしょう。旅は人の世界を広くさせると言いますが、その為にはまず、心に新たなものを受け入れる余裕がなくてはなりません。
余談ですが、ヴィクトリア時代初頭、エジプトへ訪れたイギリス人旅行者の多くは、実際に対面したら感想を期待はずれであったと書き残しています。長旅の末自分達が出会ったものは、ただの雨風にさらされた巨大な岩の塊だったと。もし彼らの目的が遠くへ行く事そのものであれば、Brian のように出会う全てのものに好奇心を持ち、考え、楽しめていたら、、、全く違う旅になっていた事でしょう。
一貫した信念に基づいた Brian の旅とクリエイション・ワークに対するアプローチ。それは我々にある映画監督の掲げるクリエイションに対する考え方を彷彿とさせました。アメリカでカルトな人気を誇る Jim Jarmush 監督、To-orist のコンセプトとも通じるクリエイティブな5つのルールを最後に紹介します。
「オリジナル、というものは無いに等しい。全てはどこかから盗んできたもので、それをインスピレーションと言ったり、自分のイマジネーションのこやしにしたりする。とにかくあらゆるものから盗む。昔の映画、最新の映画、音楽、文学、絵画、写真、詩、夢、たわいない会話、建築、町並み、ストリート・サイン、森林、雲、水滴、光、それから影。そこから、自分の魂に直接語りかけてくるもののみ、選出する。この方法ならば、作品(とあなたの盗んだもの)は真正なものとなる。真正さ、すなわちオーセンティックであることに対する重要性は計り知れない。これは、オリジナルである事とは異なる。オリジナリティというものは存在しない。また、盗む、と言う行為をごまかす事に必死になる必要もない。むしろお望みとあらば賞賛すべき行為だ。そしていかなる時にも、巨匠ジャン・リュックゴダールの言葉を忘れてはならない。『どこから持ってきたか、ということではない。それを持ってどこへ向かうかである。』(Jean-Luc Godard)」
To-orist の最新コレクションはこちら。
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